広島汁なし担担麺ってご当地グルメなの?

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広島汁なし担担麺は、2010年ころから、広島のご当地グルメとしてマスコミで取り上げられたり、旅行誌にも広島観光や広島グルメの情報として掲載されるようになりました。

広島の汁なし担担麺が全国の他の地域の汁なし担担麺とは違う特徴があります。それは、広島には、汁なし担担麺の『専門店』が他の地域にと比べてズバ抜けて多いことです。専門店というのは、メニューに「汁なし担担麺」しかなかったり、お店の一番主なメニューが汁なし担担麺だったりするお店のことです。

汁なし担担麺は、例えば東京のいわゆる「中華料理店」や「四川料理店」でも食べることができます。そういうお店の、多くのメニューの一つとして汁なし担担麺があって、お店に来るお客さんは、ラーメンやマーボードーフなどもある中から、汁なし担担麺を選ぶ方もおられる感じです。
※この記事は、もともと2014/2に書いたものです。その後、キング軒東京店さんをはじめ広島方式の汁なし担担麺店が東京に多く出店され、大変嬉しく思っています。

これに対して広島では、例えばキング軒さんや梵天丸さん、武蔵坊さん、國松さんのように、お店に来るほとんどのお客さんは汁なし担担麺を食べていて、他のメニューがあっても開店時から品切れだったり、こんな風に、「汁なし担担麺の専門店」が多いことが、広島の特徴なんですね。

そんな広島の汁なし担担麺事情なのですが、実は、わたしは広島汁なし担担麺がご当地グルメとか広島名物と言われていることに、ちょっとだけ懐疑的な気持があるんです。だって、この汁なし担担麺って広島のものを使っていないんだもの。

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※上から國松さん、すずらん亭さん、キング軒、武蔵坊さんの汁なし担々麺

 

さてここで、広島汁なし担担麺の主な材料を確認してみましょう。麺、山椒や唐辛子などの中華香辛料、そしてミンチと味噌を混ぜた肉味噌・・・・・。何店舗か回っていると、どのような材料を使われているか、なんとなーく分かってきます。中にはレシピや材料などがブログやFacebookに掲載されていたりするお店まであるんですね。いや、良いことだと思いますよ。それで、そういった情報を総合してみますと、多くの店舗では、「麺」って関東地区など東日本の製麺工場で作られたものを使用されているようです。そして、中華香辛料はほとんどが中国から輸入されたもの、肉味噌も県外の材料が使われているようです。
※この記事は、もともと2014/2に書いたものです。その後自家製麺や広島の製麺所など、広島で製麺された麺に切り替えられた汁なし担担麺店も多くあります。大変嬉しく思っています。

 

これ、ほんとうに広島名物?

例えば、お好み焼きの主な材料は、麺、キャベツ、ネギ、ソースなどです。この中には季節によって県外産の材料しか手に入らないものもありますが、多くは広島で作られたものが使われています。まぁ細かいことを言えば、麺は輸入小麦粉だったり、ソースも県外産柑橘類が材料なんだと思うんですが、それでも製麺やソース製造は広島でされているんですね。つまり、広島のお好み焼きは、広島にソースや製麺工場があることで、広島名物として成り立っている食べ物なんです。広島ラーメンや激辛つけ麺等も、これと同じことが言えます。

これに対して、広島汁なし担担麺の主な材料は、広島産でもなければ広島で加工されたものでもありません。仮に他県で同じように産地から材料を取り寄せれば、同じように作ることが可能です。私が懐疑的だと言うのはこんなところなんです。

 

汁なし担担麺ブームは広島だから起きた

でもね、ここで考えたいのは、広島でこんなにも汁なし担担麺が受け入れられたのはどうしてかってこと。・・・・こう考えた時に、ちょっとわたしは考え方が変わったんですね。これはやっぱり、広島名物・広島グルメだと。

広島で汁なし担担麺がブームになったのは2010年ころからなので、歴史は比較的浅いです。でも、その前から、広島にはこういう食べ物が食べたい人は多かったんだろうなと思います。その理由を、広島と辛い麺類の歴史から考えてみたいと思います。

広島の麺類といえば忘れてはならないのがうどんです。「広島駅うどん」、「カープうどん」、「むさし」、「ちから」。いずれも歴史が長く広島のうどんの代名詞にもなっています。どれも薄口の少し甘い感じのダシなので唐辛子がよく合うんですね。うどん店では唐辛子をたくさん入れて食べる方も多く、お店によっては、丼に一杯に入った唐辛子をスプーンでかけることができるようになっていて、それを山のように入れる方もいらっしゃいます。

また広島の麺類の中でも人気が高い「呉冷麺」は、お店のテーブルに唐辛子の辛味が効いた「唐辛子酢」が必ず置いてあります。唐辛子酢をかけた、辛酸っぱい味が呉冷麺の味を引き立てるんですね。

そして広島名物のお好み焼きには、麺に唐辛子を練り込んだ「激辛麺」を使ったお好み焼きがあります。

このように広島では歴史的に、もとの食べ物をトッピングで辛く変身させるものが多くあったんですね。わたしは、広島の辛い麺文化の原点はここにあると思っています。

そして90年代に入り登場した、「広島激辛つけ麺」。ここで、広島の辛い食べ物の歴史が変わります。激辛時代のはじまりですね。広島激辛つけ麺は、新華園さんでずっと以前から「冷麵」という名で出されていました。90年代になり、激辛つけ麺として流行屋さんやばくだん屋さんなど、食べることができるお店が増えはじめたことで一気にブームとなり、広島名物としても紹介されるようになりました。広島激辛つけ麺がこれまでと違うのは、辛くないものをトッピングで辛くするのではなくて、もともと辛い物として作られたことです。

しかし、この広島激辛つけ麺には、いくつか欠点があるんですね。一つは値段が高い。そして、普通の辛さではなくて激辛すぎること。さらに最大の欠点は、上手に食べないとタレのラー油が衣服に飛び散って赤いシミになってしまう。まぁそれ以外にも、名店の中に一見さんお断りのような一癖も二癖もあるお店もあったり。こういうことから、広島激辛つけ麺は、自分一人で自宅から普段着で食べに行く場合は良いのですが、オフィスの仕事仲間や、家族と一緒に行ったり、観光客をご案内するようなことは比較的やりにくい食べ物なんですね。辛いもの好きでも、広島激辛つけ麺には手を出せない方といった方は、割と多くいらしゃったのではないかと思います。

広島汁なし担担麺は、そういう中に登場しました。激辛つけ麺ほど辛くなく、値段もそこまで高くなく、しかも飛び散ることもない。激辛つけ麺の弱点・欠点が見事に克服されたものだったわけです。しかも、綺麗なお店が多くサービスも一流に近い。そんなことが辛い物好きの広島で受け入れられたのではないでしょうか。

 

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※上からきさくさん、四川麻辣商人さんの汁なし担々麺

 

ところで、広島に汁なし担担麺の専門店ができはじめたのは、2000年代はじめころです。きさくさん、それに続く竜胆さんや四川麻辣商人さんですね。

一方、広島汁なし担担麺がブームになったのは、それから10年経ってからです。ここには以前からあった店舗とその後にできた、國松さん、キング軒さん、すずらん亭さんなどとの違いもあると思うんです。特にこの3店舗さんをあげたのは、いままで激辛つけ麺が避けていた・・・、というか、どちらかというと客が激辛つけ麵を避ける傾向にあった、サラリーマンの多いオフィス街とか、休日に買物に出かけるような繁華街の場所に、汁なし担担麺の店を出店されていることです。

「激辛つけ麺」は、毎日の昼食だと予算的に大変だったり、激辛すぎで気軽に行く感じではないこと。更に繁華街のお客さんというのは、スーツを着たサラリーマンや、友人や家族と着飾って買い物などに出かけられている方たちですから、ラー油の飛び散りなんて一番困りますよね。

広島の食の歴史に深く根付いていた「辛い麺文化」、辛いものを食べたいんだけども激辛つけ麺には手を出せない。そんな欲求があったオフィス街や繁華街にぴったりだったというワケです。それから、これは特に國松さん、キング軒さんのお店に代表されるのですが、お店が綺麗でセンスが良く、しかもサービスも良くて気持ちいい。こんな、各お店の方々の努力などもあり、その結果がここまでのブームになったんだと思います。

 

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※上から、花山椒薬研堀店さん、梵天丸さん、武蔵坊横川店さん、花山椒中広店さんの汁なし担々麺

 

汁なし担々麺ブームが広島で起きたのは、もともと「辛い麺文化」という土壌があった広島だからこその現象なのでしょう。

もしかしたら、これから日本全国で流行するかもしれませんね。まさしくこれは、広島の食文化があったからこそ広まることができた食べ物に間違いありません。

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